早期胃癌に対する内視鏡的切除の絶対適応としては,
「胃癌治療ガイドライン」1)では,“リンパ節転移の可能性がほとんどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること”を原則とし,
具体的には“2cm以下の肉眼的粘膜癌(cT1a),組織型が分化型.肉眼型は問わないが,UL(-)に限る”としている(Fig. 1).
従来法のEMR(endoscopic mucosal resection)ではスネアを用いるため,一括切除できる大きさには限界が存在した.
ESD(endoscopic submucosal dissection)の開発により,2cm以上の病変やULを有する病変も,
技術的には一括切除が可能となり,適応拡大が検討されつつある.
Gotodaら2),Hirasawaら3)による,外科的切除をされた早期胃癌症例におけるリンパ節転移の検討により,転移のリスクを判断することが可能となった.
このデータに基づき,ガイドライン上,適応拡大病変は,
(1) 2cmを超えるUL(-)の分化型cT1a,
(2) 3cm以下のUL(+)の分化型cT1a,
(3) 2cm以下のUL(-)の未分化型cT1aと規定されているが,
現時点では長期予後に関するエビデンスに乏しいため,JCOG0607などの結果が出るまでは臨床研究として行うことが望ましいと明記されている(Fig. 2).
適応拡大に関する臨床試験としては,JCOG0607とJCOG1009/1010が現在進行中であり,いずれもJCOG(日本臨床腫瘍グループ)における多施設共同前向き試験である.
JCOG0607は,“2cmを超えるUL(-)の分化型M癌,3cm以下UL(+)の分化型M癌”を対象とし,5年生存割合をprimary endpointとしている.
2010年10月に登録は終了し,結果が待たれるところである.
JCOG1009/1010は“2cm以下のUL(-)の未分化型M癌”を対象としている.
ESD切除標本診断で未分化型優位であった症例の5年生存割合をprimary endpointと設定し,2011年2月より登録を開始している(Table. 1).
適応拡大病変